亀甲竹一重切花入3日間コース 

亀甲竹一重切花入3日間コース 



〈1日目〉

野崎宗雪による竹花入教室が始まりました。

まず初めは講師による座学から。

竹花入のはじまりや、利休がつくった花入の話、一重切花入の基本の寸法、茶杓や花入など茶道具に用いられるさまざまな竹実物を見たり触ったりしながら学びます。

いざ実践へ。

①竹を伐る。
今回使用するのは孟宗竹の変異種と言われる亀甲竹。立ち枯れ(立ったまま枯れ、自然に乾燥されている竹)した竹を選び、それぞれ一本づつ、竹引鋸で伐ります。

偶然の産物。根っこが付いたまま伐ることが出来た方もいらっしゃいました。

②粗切り
一本の竹から花入にしたい部分を罫書き、大体の大きさに切っていきます。自然に出たシミやゴマなど、なんとも言えない寂れた景色があり、どこを取っても美しい竹。みなさま真剣に向き合っておられました。

③竹を洗う
粗切りした竹を水できれいに洗います。土のほこりや節アカ(竹の節の部分の汚れ)をブラシを使って落としていきます。
汚れを落とす事で竹本来の景色が現れ、同じものがふたつとしてない、一本一本違った個性に感動します。

④正面を決める。
ここが一番悩ましいところ。全体のバランスを考えながら、どこを花入の正面にするか決めます。角度ひとつで雰囲気ががらっと変わります。

ー 1日目はここまで。
次回はいよいよ花を生ける窓を開けていく作業です。

どんな花入になるのか、とでも楽しみです!

〈2日目〉

2日目の行程は、

・粗切りした亀甲竹の天と地を鋸で平行に切る。
・正面を決める。
・花を生ける窓の位置を決める。
・鋸、のみ、小刀を使って窓を開ける。

という花入製作において一番の山場の作業です。

とてもシンプルな作業に見えて、竹を天と地に平行に切ることの難しさ。道具の使い方、力の入れ方や身体の重心をどこに置くと作業しやすいのか。

実際に素材に触れ、作ってみることで職人の手仕事やその難しさに気づき、体感することができます。

立ち枯れした亀甲竹は雨水によってできたシミやゴマが詫びた景色を作り、どこをとってもうまみがあります。

実は、正面を決めるのにとても時間がかかるのです。
皆様、選んだ竹と真剣に向き合っていました。

茶道における竹の見どころとして「蟻穴」と呼ばれるものがあります。

名前の通り、蟻が竹に開けた穴のことを言います。茶杓や花入においてその価値はとても高く、なんとも言えない詫びた景色を作ります。

今回お客様が伐った竹にも蟻穴があり、天と地を切ると大量の蟻が出てくるハプニングが!

蟻穴に蟻の蒔絵を施すことはありますが、実際にその景色を見ることができるとは…!

これも実際に竹を伐ったからこそできる体験。生きている蟻にはぎょっとしましたが、とてもラッキーでした。

亀甲竹は孟宗竹の変異種で自然にくねくねと曲がって育ちます。
正面の位置を少しずらしたり、角度を変えるだけで仕上がりの印象が大きく変わる亀甲竹。
どれも違った個性でとてもおもしろい素材です。

 

〈3日目〉

3日目の工程は、

・鋸と小刀を使って柱を削る
・掛け穴を作る
・のみを使って内側の節を抜く
・ヤスリやとくさを使って全体を整える
・鉈を使って竹の落としを作る
・実際に植物を生ける

という、いよいよ花入の仕上げの工程です。

前回窓を開けた縁の部分に鋸で切り込みを入れ、小刀で面取りをし、柱を整えます。

少し面取りするだけで全体の雰囲気がぐっと変わるので、みなさん切り込みを入れる瞬間は真剣そのもの。

柱ができると少しずつ花入れらしくなっていき、完成が楽しみになってきます。

背面に掛け穴を開け、のみを使って中の節を抜き、ヤスリで頭の部分や底の部分、窓の切り口を磨いて全体を整えます。

全体が整ったら、花入の内側に入れる、“落とし”の製作です。

それぞれの花入に合う太さの白竹を選び、竹の皮を鉈で剥いでいきます。

鉈を竹の断面に食い込ませ、トンと下に押していくと竹の縦の繊維に沿ってするすると皮が裂けていきます。

落としがすとんと中に入ったら「亀甲竹一重切花入」の完成です。



茶道具の中で最も竹の個性を活かした造形と言われる「竹花入れ」。
決して派手ではありませんが、季節ごとの植物が、まるでそこに咲いているかのようにその魅力を引き立てます。

普段、景色として見たり、道具として使うことの多い竹。
一本の竹を道具を使って伐ったり削ったり、鉈で裂いたり、様々な工程を経てその素材の持つ特性を知ることができます。

最後は完成した花入れに季節の植物を思い思いに活けこみました。



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