花屋みたて「松竹梅」生けこみワークショップ

花屋みたて「松竹梅」生けこみワークショップ

2022年3月5日(土)

天満宮の梅も見頃を迎え、春の気配を感じる中、竹生園で花屋みたてさんによる「松竹梅」生けこみワークショップが行われました。

今回のワークショップは、竹生園の竹林に生えている黒竹を切り、穴をあけ、そこに梅と松を生けるという内容。


まずは弊社の竹林管理から製材担当している東前さんによる竹の話から。


春は竹の秋。たけのこに栄養を運ぶことで葉っぱは黄色く色付くのだそう。上を見上げると少しずつ黄色く色づいている様子がわかり、春の訪れを感じます。
笹が枯れ、はらはらと落ちていく景色は雪のようで本当に美しいそうです。

竹林は野鳥も多く、メジロが竹に巣を作るのだそう。

鳥の声や笹の葉が揺れる音を聞きながら竹の話を聞き、普段東前さんが竹林で見る景色を少し感じられた気がします。

今日ワークショップで使用する黒竹は、生えてきたときは他の竹と同じようにみどり色で、紫外線を浴びることでだんだん黒く変化していくのだそう。

竹を切るときに用いる鋸の使い方を学び、
そしていよいよ実際に黒竹を切っていきます。


切る竹の根元の土を掘ります。
根本を覆う土はふわっと柔らかく、思っているよりも深く掘らなければ根元が見えてきません。根元からはさらに細い根っこが地面に張りめぐらされており、竹の生命力に皆驚きました。

直径3センチほどの細めの竹ですが、想像以上に固い。それぞれ真剣に竹を切り、切った竹を運びます。高さ6メートルほどある竹を持って、運びたい目的地までどう通っていくか、上の方で葉っぱが絡まっていないか、さまざまなところに気を配りながら竹を運びます。細い黒竹でも結構重く、切って運ぶだけでも一苦労です。

普段、何倍も太くて重く、長い竹を切る東前さん。バランス崩すと竹の下敷きになってもおかしくない。一本一本運ぶことがどんなに大変なことだろう、と身を持って感じます。

そして、一本の竹から花入にしたい部分を選び、竹を切り、枝を落としていきます。

「竹を切って枝を払うところから生けていると言う感覚で竹を花入に見立てることを意識してくださいね。」とみたて店主西山さん。

また、花を生けるときはあえて落ち葉や枯葉を添えるのだそう。綺麗な植物だけではその時の様子や季節がわからないから。でも、落ち葉を添えていれば後から見たときにその時の状況や季節を読み取れるのだそうです。

竹の枝を落とす時、枯れている葉を残すことで季節が移り変わることを感じられる。だから残しましょう。と。

また、茶人や昔の人の生けている花の組み合わせで、その季節のいつごろ行けたのかが大体わかるそうです。

普段見落としてしまっている落ち葉や枯れ葉がこんなに重要なことを語るなんて。

西山さんのひとつひとつの言葉を聞くたびに、目の前の景色や、いままで見ていた世界の捉え方がどんどん変わっていきます。

ーー

どこを使ってどこを残そう?
全体のバランスを考えたり、皆真剣な眼差しで竹と向き合いました。

迷っている私に西山さんから一言。
「切るか切らないか迷ったときは、切らなくて後悔するより切って後悔する方が良い。」
ずんと心に響きます。

葉っぱひとつ切るのも生けるという行為。
背筋が伸びる緊張感の中でそれぞれの花入が出来上がっていきます。

穴をあけ、花入が完成したら、次はいよいよ松と梅を生けていきます。

ーー

 
梅は毎年、枝に対して垂直に新芽の青い枝がぴんと張って生えてくるのだそう。まさに「春が立つ」。その光景から「立春」という言葉が生まれたのではないかと西山さんは考えられているそうです。
また、梅は新芽からしか花が咲かないそうです。

松は、裸子植物
竹は、被子植物の単子葉類
梅は、被子植物の双子葉類

松は、常緑の針葉樹
竹は、(常緑の広葉樹、または草本類?)
梅は、落葉の広葉樹

竹については意見が分かれますが、分類できない中間的な植物という意味で、松、梅とは性質が異なり、各分野に分かれているというのも面白い3種だそうです。

それぞれ一種類だけでも生けこみが成り立つ強い個性を持ち、それぞれ性質が異なる3つの植物を一度に生ける今回の生けこみはとてもスペシャルなものでした。

花を生けるために竹を紐で固定するために結び方を西山さんから学びました。
結び方の名前は「巻き結び」。
これは西山さんの故郷の漁師さんが港に船を停める時、堤防から船が離れないように結ぶロープの結び方と同じ方法だそうです。
簡単なのにどんどん締まっていく。先人が生み出した技に感動です。


生けかたのコツは?

ーー 
光が入ってくる方向に向けて植物が向かっていくように生けるのもよし。

植物と向き合い、自然の声を聞く西山さんだからこそ出てくるひとつひとつの言葉が心に残る一日でした。

身体全体で学び、今の季節でしか味わうことのできない贅沢な時間。

何気ない日常の中できらっと輝いて見える瞬間が増える予感がしました。

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